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「人間-機械システムの最適設計」をテーマに掲げ,人に優しいものづくりに取り組んでいます

救急車関連
 救急車による搬送では,運転手のアクセル・ブレーキ・ハンドル操作に合せて,慣性に起因する加速度が患者の体にかかります.傾斜路を走行するときには,これに加えて重力加速度成分もかかります.このような加速度を仰向けの状態で受けると,血圧が変動したり,身体が左右に動揺するので,重篤な患者さんの場合には,容態が悪化する恐れがあります.重篤でなくても,血圧変動や揺れによる影響で不快感を抱き,揺られ続けると動揺病を招くこともあります.したがって,容態を悪化させることなく安全に搬送するためには,少なくとも体にかかる加速度を小さく抑える必要性があります.救急車をゆっくり丁寧に走行させれば,加速度を抑えることができますが,その場合,病院への到着時間が長引き,逆効果になりかねません(迅速性と安全性のトレードオフ問題).そこで,迅速性を失うことなく,加速度による悪影響を小さく抑える方法について取り組んでいます.

救急車の走行計測
 救急車による搬送現状を把握するために,車内に計測装置を取り付けて,位置,速度,加速度の情報を取得しています.これまでに,仙台市(2003年.加速度のみ),広島市(2013年),徳島県(2015年)で情報を収集しました.測定データを解析すると,搬送ルートはもちろんのこと,運転の仕方,車体振動,道路の路面状態がよくわかります.また,防振台に加速度センサを取り付けて,振動吸収特性も調べています.振動測定で使用する加速センサは,1G,1.7G,4G,10G,50G用を状況に応じて使いわけます.長期的な計測では,運転訓練支援システムとして構築したiPhoneをデータロガーとして使っています.
生体モデリング
 加速度を受けることで起こる血圧変動や血流変動,あるいは後背面にかかる圧迫荷重や不快感をコンピュータ上でシミュレーションできるようにするために,それぞれの現象を加速度情報から再現する数理モデルを構築しています.例えば,血圧変動を再現するモデルは,右の写真のような傾斜角を自由に変えることのできる傾斜ベッドを使って,救急車の加速減速状況を擬似的に再現しながら血圧データを取得し,そのデータに基づいて作成しています.圧迫荷重や不快感は,実際に被験者を福祉車に乗せて測定しています.このような数理モデルを活用し,救急搬送に潜在化している迅速性と安全性のトレードオフ問題の解決に取り組んでいます.
加速度による身体負荷の実態予測
 救急車の走行データ(位置,速度,加速度)と上記の数理モデルを用いて,血圧変動や不快感などをコンピュータシミュレーションし,患者さんにかかる負荷を推定しています.推定した負荷レベルを電子地図やGoogleマップ上に走行経路と伴に表示すると,負荷が大きくかかる場所が一目瞭然にわかります.また,加速度データを見ると,運転手の方が細心の注意を払って運転していることもわかります.
アクティブ制御ベッドの開発
 救急車が加速・減速する際に起きる血圧変動やカーブを走行するときに起きる横揺れ軽減するベッドを開発しています.車内に設置された加速度センサで車両の加速度を計測し,その大きさに応じてリアルタイムでベッドを傾斜させたり,体軸周りに回転させることで重力加速度と相殺させ,血圧変動や横揺れを抑えます.完全に加速度に同調させてベッドを動かすと乗り心地が悪化するので,加速度に対して感度調整を行う必要があり,典型的な人間-機械システムと言えます.実際に乗るとわかるのですが,抜群の効果があります.詳しくは,【こちらを見てください】
運転訓練支援システム
 慣性加速度に起因する血圧変動や背面荷重変動,不快感は,運転手のアクセル・ブレーキ・ハンドル操作を改善することで小さく抑えることができます.そこで,搬送時間を延ばすことなく,これらの負荷を小さく抑えるような運転技術を習得するための運転訓練支援システムを開発しています.現在は,アップル社のiPhoneに数理モデルを組み込んで,血圧変動,背面荷重変動,不快感を推定し,それらの推定値が閾値を超えた時に音声で運転手に通告するようなシステムとして試作しています.これにより,運転操作と負荷のかかり方の対応が把握できるため,効率よく運転技術を改善することができます.とりわけ,運転経験の浅い隊員へのOJTを補うシステムとして役立つものと期待しています.救急隊員以外に,福祉車の運転手に対しても適用可能です.もう少し詳しい説明は,【こちらを見て下さい】.
最適搬送経路
 患者の病態や緊急性に応じて,許容される到着時間や血圧変動,揺れによる圧迫度が異なります.例えば,心停止のように一刻も早く病院に搬送しなければならない場合には,最短時間のルートが好ましく,一方,生死に関わらない骨折のような場合には,到着時間が少し延びても,加減速する頻度が低く揺れの少ないルートが望ましいかもしれません.このような点に着目し,コンピュータ上で血圧変動や圧迫荷重を再現しながら,救急車の最適な搬送経路を学術的に明らかにしています.血圧変動や圧迫荷重は,道路の高低差やカーブの曲率によっても程度が異なるため,標高情報やアーク情報も利用して負荷レベルを計算します.最適経路は,搬送時間,血圧変動,圧迫荷重を最小化するような多目的最適化問題に定式化したのち,遺伝的アルゴリズムなどの数値探索法を用いて割り出しています.出発地点と搬送先病院の組み合わせによっては,パレート解として複数のルートが得られます.その場合は,病態に応じてルートを1つ選定します.
院内搬送における加速度・血圧測定
 看護師の方の協力を得て,病院内でベッドを手押しで移動する際にどの程度の加速度がかかり,血圧がどのように変化するか測定したことがあります.走って院内を移動するような緊急の場合には,移動開始時と停止時に0.1 G程度の加速度がかかることがわかりました.一方,血圧は,搬送の開始前よりも終了後の方が下がることが確認されました.これは動脈圧受容器反射による効果です.院内では足を進行方向に置いて運ぶため,スタート直後は慣性力が足から頭の方向にかかります.これにより圧受容器近辺の血圧が上昇します.その変動補償として,圧受容器反射が血圧を下げるため,搬送後の方が血圧が低くなります.

制御関連

 制御システムには,制御目標や可動制約など複数の条件が課されることがほとんどです.特に,これらの条件が不等式の形式で与えられ,かつ,常に満たされることが絶対条件であるようなクリティカル制御システムを研究対象として,その設計理論と実機による有効性検証について取り組んでいます.

適合原理に基づくクリティカル制御系設計
 制御仕様や可動制約が,制御量Zi (i=1,2,...N) とその許容値Ci (i=1,2,...N) を用いて,N個の不等式|Zi|≦Ci として与えられるクリティカル制御システムのコントローラを効率よく設計するためには,制御量に影響を与える外部入力のクラスをできるだけ絞った方がよいと考えられます.例えば,外部入力の一つである目標値信号が滑らかに変化するのであれば,最大変化率の大きさが C 以下であるような入力集合の一要素として扱った方がよいでしょう.このように,実際に起こりうる外部入力の特徴に合せて制御システムを設計する概念は,適合原理と呼ばれています.本研究では,この概念に基づく制御系設計法を研究しており,アクティブ制御ベッドのような典型的なクリティカルシステムに対してコントローラを設計し,その有効性を検証しています.
状態・未知外乱の同時推定とその応用
 外乱を受けても不等式制約 |Zi|≦Ci を保証するコントローラを設計する手法として,外乱オブザーバを用いた外乱相殺型ロバスト制御があります.この方法では,外乱オブザーバを用いてシステムに加わる外乱をリアルタイムで推定し,その推定値をアクチュエータにフィードバックすることで外乱の影響を抑えます.本研究では,外乱に加えて,センサで観測できないその他の変数も同時に高精度に推定する状態・未知外乱オブザーバの設計法と実機による有効性検証に取り組んでいます.また,このオブザーバをパワーアシスト制御や故障検知・状態診断システムに応用する方法についても研究しています.

インタフェース関連
 視線や頭部の動きによって,スマートフォンやタブレットのアプリを操作する非接触型のインタフェースの開発を行っています.タブレットに内蔵された正面カメラでユーザーの眼球や頭部の運動を捉えて,その動作パターンからユーザーが意図した操作を読み取り,アプリを動かします.アイトラッキングやパターン認識に関する最先端のコア技術開発というよりは,処理能力が低いデバイス上でも操作性よくアプリを動かすための実用的な技術を開発しています.どちらかというと,まだ勉強中といった段階です.

カメラ画像に基づく注視領域の推定
 ユーザーが見ている正面の空間をいくつかの平面領域に分割し,カメラで捉えた目や頭部の動きなどから,ユーザーがどの領域を注視しているのか推定する技術を開発しています.アイトラッキングのように,視線からピンポイントで注視点を推定するわけではなく,注視点を含む大まかな領域を推定します.デバイスのリソース制約のために,少ない計算量で実行できることが好まれるタブレット用の非接触インタフェースへの応用や自動車の運転手の注視領域推定への応用を考えています.
眼球および頭部の運動によるデバイス操作のためのインタフェース開発
 スマートデバイス(スマートフォンやタブレット)のアプリを,目や頭を動かして操作するための非接触型インタフェースを開発しています.例えば,タブレットに保存されている小説や漫画といった電子書籍のページをめくるのに,指によるタッチ操作を行わずに,目や頭を回転させることで実現する機能です.既に,このような機能は世の中にありますが,本研究の目標は,できるだけ少ない計算量でかつ精度良く実行できるインタフェースを作ることです.端末内蔵のRGBカメラでユーザーの顔を撮影し,画像処理を行って虹彩の中心点を求め,その動きからパターン認識技術を活用して,ユーザーの意図する操作を読み取ります.現在は,iPhoneやiPad用の電子初期のページめくりソフトを製作しています.

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